日本は標準化の意識が低いらしい。なんで?

 ITS(Intelligent Transportation Systems)の講義で、標準化の話題が出ました。ちょっと興味があったので質問してみました。
世の中はどれくらいITSに対して戦略的な取り組みを行っていますか?例えば国際標準化に向けてとか。
回答はあまりよく分からなかったけど、以下のような感じらしい。

  • アメリカとヨーロッパでは、標準化に向けての組織が組まれている
  • 日本では、個別企業がぼちぼち

みんなあまり、興味ないんですか?

ITS(Intelligent Transportation Systems)について

 ITS(Intelligent Transportation Systems)とは、

ITS(Intelligent Transportation Systems)
人と道路と車両を情報通信でIT(情報技術)でつなぎ、道路交通をより高度に利用するシステム

身近なところでは、カーナビやETCなんかがあてはまります。高度道路交通システム-Wikipedia
 今日、講義ではその中でも特に「プローブカー/フローティングカーシステム」についての話がありました。フローティングカーシステムとは、

プローブカー/フローティングカーシステム
自動車同士が力を合わせて問題を解決するシステム

いまある自動車では、カーナビで地図情報を受け取るというように、情報を消費するのが中心です。それを逆に自動車からも情報を発信して、共有していこうというのがこの発想です。フローティングカーデータ-Wikipedia
 使い道としては、位置情報から渋滞の様子が分かったり、ABS動作情報から危険な場所・速度をまとめることなどがあります。中でもおもしろかったのは、「ワイパーが動いた」という情報を地図上に表して、通り雨の過ぎていく様子が観測できたところでしょうか。気象観測よりもよりリアルタイムかつ高精度でゲリラ豪雨なんかの予測なんかができるわけです。
 また自動車は、重い荷物を積み、長時間動くバッテリを載せて人間と共に移動する物です。これは、災害や緊急時において最後の砦となりえます。このようなことを考えると、自動車の可能性って、意外といろいろあるんだなぁと思いました。

ITSが機能するには、標準化が必要

 そんなこんなでワクワクしていると、標準化という政治的な問題が出てくるのです。車があって、道路があって、どんな車でどの道路を走ってもそんな便利機能を享受できるとなるには、どの車にもどの道路にも同じような規格が必要なわけです。そしてこの標準化の問題は、いまの時代、すぐさまグローバルな問題に発展してしまうのです。
 特に自動車は、輸出入において大きな要素だと聞いています。そんなときに貿易国間で規格のずれがあるととたんに大きな障害となります。聞いた話だと、日本のトラック産業は、国際的にかなり脆弱だとか。かつて日本のトラックは、速度に応じて転倒するランプがフロントに3つ付けられていたそうです。私も見たことがあります。でも、外国ではそんな規格がありません。そんなわけで、外国のトラックを輸入するにはその調整が必要で、余計にお金がかかり、海外の自動車会社は日本に入ってこなかったそうです。すると、日本国内では国産のトラックしか走らず、海外に比べて競争が弱くなり、品質は日本国内向け。日本のトラックでは、海外の過酷な道路に耐えられなくてすぐ壊れてしまうそうです。

日本はまだ意識が低いらしい

 携帯電話の分野で「ガラパゴス現象」という言葉があります。日本は国内だけで独特の発展を遂げて、国際標準への戦略が無かったために国際競争に乗りこめないでいるという話です。まるで鎖国して日本独自の文化が発展したーみたいな話ですね。結局、冒頭の話にあったように、このITSという分野においても国際競争の戦略として標準化の問題をとらえていかないと、日本の自動車産業ガラパゴス化するか国際競争でのアドバンテージを失うかという残念な結末が見えてきてしまうわけです。
それとも、ITS自体があまり注目されていないのかな・・・。ETC普及してるし、そんなことないとは思うのですが・・・。

なんで?

 なぜ日本はこうも標準化の意識が低いのですか?そりゃまぁ、地政学上の問題はあるでしょう。外国と海で隔たれているから、外に対する意識が低い、と。でも、ガラパゴス現象のように、標準化の問題はもう目に見えてきているのだから、何かしらの動きがあってもよさそうなものなのに・・・。なんで?

  • 技術者が世界を見ていないから?
  • 経営者に標準化のビジョンがないとか?

 実はちょっぴり、技術者や科学者というと、立っている場所が国という枠を超えたところにあるので、世界を見ていないはずはないのでは・・・と思っていました。大学でも英語の論文読まされるし、英語で講義やディスカッションするところもあるらしいし。オープンソースの世界に首を突っ込むとたいてい英語だし。しかしまぁ、私自信の感覚からしても、どうにか勉強しなきゃーと思いつつ実際に海外で議論や交渉をすると考えると不安になってしまいます。そういうことなのでしょうか。
 「理系企業の経営者は理系出身の人間がやるべきだー」という主張を聞いたことがあります。今後のビジネスモデルは、人や金の扱いを専門に勉強した「どう作るか?」よりも「何を作るか?」のビジョンをもつ必要があるとかなんとかだったような気がします。似たようなところでしょうか。「モノを作る」技術は、「モノ」そのものだけではなく「作る」という作業も重要な要素です。すると、作る途中で「モノ」の満たすべき条件として、規格やら他技術との連携やらを考える必要がでてきます。理系企業の経営者にこうした素養が欠けているということでしょうか。
 まぁ、実は単純に技術開発するだけのお金がないということなのかもしれませんが・・・。標準化の問題はいろんな分野で耳にします。日本の競争力がいまどの程度なのかあまり分かりませんが、どうにか変わっていって欲しいものです。というか、この方面でもビジョン持って活躍できる人材になりたいです。